Homeへ

横浜教問懇TOPへ


 
 横浜教育問題懇談会は、2009年10月30日に、横浜市教育委員会に「2010年度 教育予算編成に向けた要望書」を提出しました。

2009年10月30日

横 浜 市 長  林  文子 様

横浜市教育委員会

教育委員長 今田 忠彦 様

長  田村 幸久 様

横浜教育問題懇談会 

〜子どもたちが生き生きと学び、成長できる学校教育をめざして〜

2010年度 教育予算編成に向けた要望書

 

 すべての子どもたちにゆきとどいた教育を実現するためにご尽力されておられる貴職に対し、敬意を表します。

 さて、この夏、「構造改革」路線により国民生活に大きな困難を生み、矛盾を拡大させてきた自公政権が交代へと追い込まれました。しかし、これらの政策によりつくり出された貧困と格差拡大等により、現在も国民生活は一層深刻な状況に置かれています。学校教育においても授業料を払えずに退学に追い込まれたり、大学進学を断念せざるを得ないなど子どもたちにも追い打ちをかけています。義務教育における就学援助受給率が拡大し続けていることにも、その一端があらわれています。「子どもの貧困」が指摘される中、教育の機会均等をはかる教育諸条件整備の充実は緊急の課題です。また、市内小・中学校の不登校児童・生徒は若干の増減はあるものの依然として高い比率を示し、校内暴力発生件数、いじめ発生件数も深刻な状況です。

 横浜教育問題懇談会は、21世紀をになう子どもたちにとって、学校が安心で安全な楽しい居場所となるよう、憲法、子どもの権利条約にもとづいた教育施策の見直しが早急に必要だと考えます。そして、そのためにも教職員の勤務条件が改善され、学校に働くすべての教職員が協力協同して子どもに寄り添い、教育に取り組める体制の確立が大切だと考えます。

厳しい財政状況にあっても、すべての子どもたちの教育を受ける権利を保障することを最優先にした観点からの教育予算編成が求められています。大型公共事業を抜本的に見直して、子どもたちの未来のための施策に重点的に予算を振り向けることを強く要望するものです。以下各項目について要望内容をまとめました。これらの実現にご尽力いただきますよう要請いたします。

なお、要望事項については、誠意を持って回答されますようお願いいたします。

 

1.義務教育無償の原則に立った学校運営のために

 

新しい市長をむかえ、前市長によるゆき過ぎた「受益者負担」(負担の適正化)施策を見直し、すべての子どもたちが家庭の経済状況によって教育の機会均等からはじかれることのないよう、「学校のお金のこと」を心配しないで安心して学校生活をおくれる教育条件整備に舵を切っていただくよう要望します。

 

A)学校配当予算

 

(1)学校配当予算額は6年間連続して減額されてきました。「教育予算の概要」にも示されているように、児童・生徒一人当たりの学校運営にかかる経費は、平成14年度、小学校65,967円

  中学校84,228円だったものが、平成20年度には、小学校53,911円、中学校71,485円に減額され続けています。このことにより、学校運営に要する経費は限界に近づいており、校長の名のもとに保護者負担を増額する傾向が強まってきています。

   また、教育委員会各所管より発せられる文書により、公然と保護者への負担が指示される状況も生まれています。義務教育無償の範囲を拡大し、教育の機会均等をはかる上から、次の項目について対応を求めます。

 

 @学校配当基準を見直し、学校実態に見合う学校配当予算の増額を図ること。そのために「現場主義」の観点から学校ヒヤリングシステムなどの導入を検討すること。あわせて、準公金と位置づけている学校納入金の実態調査を行い公表すること。

 

 A横学保第30号(H20.8/6)文書を取り消し、当面、要保護児童・生徒、準要保護児童・生徒の健康手帳代金を無料に戻すこと。また、健康手帳の持つ性格からも公費負担とすべきものとして全額公費負担とするよう検討すること。

 

B教小中第1728号(H21.7/27)文書を取り消し、一部有料化(保護者負担化)された「心の教育ふれあいコンサート」参加料を全額公費負担に戻すこと。

 

 C小学校「宿泊体験学習」、中学校「自然教室」、個別支援学級「合同宿泊学習」にかかる交通費を全額公費負担に戻すこと。

 

 D「公費・私費負担区分」(学校配当予算執行要領P1−2〜)を見直し、本来公費負担すべきものについての公費化を進める計画を策定すること。

 

(2)県費旅費予算の削減により、旅費執行が年々困難になっています。その一方、教育委員会により新たに企画される出張要請は毎年増えています。出張の見直しを行うとともに、今後、新たに企画される出張については、すべて主催者負担(教育委員会負担)とする財政措置を行うこと。

   あわせて、各校の旅費執行状況の調査を行うなど実態把握を行うとともに、この2年間に新たに出張として企画されたものの内容および件数について資料提供を行うこと。

 

B)施設設備等の改善・改修

 

学校は、子どもたちにとって学びの場であるとともに1日の大半を過ごす生活の場でもあります。

子どもたちの安全を最優先した環境整備を計画的にすすめるとともに、緊急な事態に速やかに対応で

きる仕組みをつくり、学校が気軽に相談できる学校⇔市教委体制が求められています。また、授業時

数確保により授業日数が増え、暑い中で授業を受ける状態が増えています。これまで、教室に扇風機

を2台設置する対応がされたが、十分な効果は得られていません。川崎市で全教室クーラー設置計画

が進んでいるように、横浜市においても快適な学習環境で学校生活がおくれるよう対策が求められて

います。

 

(1)校舎耐震工事の進捗状況と今後の計画について明らかにし、緊急に校舎耐震工事を完了するように進めること。

 

(2)校舎改築、維持管理計画(学校特別営繕事業:教室整備、トイレ改修、体育館改修など)の進捗状況および今後の計画について明らかにされたい。

 

(3)経費節減のため、校舎外壁塗装、雨漏り補修等が必要な時期に実施されず、放置されざるを得ない状況も生じている。学校ヒヤリングシステムを導入するなど、定期的に学校現場の生の実態を共有しあえる方法を検討すること。

 

(4)暑さ対策のため、普通教室へのクーラー設置計画の策定を検討すること。

 

C)就学援助制度等

 

就学援助制度は、義務教育学校に通う子どもにとって唯一のセーフティーネットです。家庭の厳しい経済状況が続く中だけに、認定に際しての所得限度額や支給内容等の後退は、子どもの学習権保障に直結する問題です。校外学習の積立金が払えずに、参加できない子どもを生じさせてはなりません。学校が未納家庭への取立屋になって、お金のことで子どもたちの成長が妨げられるようなことがあってはなりません。また、複雑な家庭環境を背負った子どもたちが増えてきているだけに、それらにも丁寧に対応できるよう学校の窓口でもある学校事務職員の力量を高める対応も求められています。

 

(1)就学援助認定基準となる世帯収入および所得限度額を引き上げること。当面、生活保護基準の1.1倍とすること。

 

(2)就学援助の支給額の増額をはかること。あわせて、中学生に学校給食費相当分の昼食費の補助を行うなど援助の種類の拡大をはかること。

 

(3)就学援助制度についての教育委員会による説明会を実施するとともに、各区の生活保護担当者と学校事務職員との連携がはかれる仕組みづくりを進めること。

 

2.30人学級の実現など教育条件の整備のために

 

教育条件の整備は、教育行政が責任を負うべき中心的な役割です。一人ひとりの子どもたちにゆきとどいた教育を実現していくために必要な条件整備を積極的に進めていく必要があります。また、子どもたちの安全をはかる上でも、人的な措置が大切です。公務員のワーキングプアが叫ばれる中、学校もその例外でなく、多様な非正規雇用職員が毎年増え続け、退勤後アルバイトをしなければ生活できない若い非常勤職員もみられます。30人以下学級の実現をはじめとする人的措置の充実は、子どもの学習権の保障とともに、雇用拡大という点でも、求められている課題です。

 

(1)公私立小・中・高等学校の30人以下学級を実施するよう、県、国に強く働きかけること。

 

(2)横浜市独自に、教職員を配置した少人数学級の拡大に取組むこと。また、市立小・中学校で、35人以下学級、30人以下学級を実施した場合の試算を明らかにされたい。

 

(3)義務教育国庫負担制度を国の責任として堅持するよう、県、国に強く要請すること。

 

(4)年度始めから採用する臨時的任用職員については、4月1日付発令とし、勤務条件を改善すること。当面、県教委と同様に定数内(欠員)臨時的任用職員の4月1日付発令を実施すること。

 

(5)学校事務職員が学校教育に果たす役割の重要性から、学校事務職員の欠員状況を解消し、全校に正規の学校事務職員を配置すること。

 

(6)新採用学校事務職員は複数校への配置を原則とし、単数校に配置する場合は、非常勤事務職員を加配すること。あわせて、要・準要保護加配基準のうち、100名を超えるが25%を超えない学校に、就学援助事務が集中する4,5月限定で非常勤事務職員を配置するなど学校を支援する対策を検討すること。

 

(7)県費負担教職員の政令市移管については慎重に対処するとともに、現在までの県などとの検討状況を明らかにすること。

 

(8)政令市移管を検討している状況下において、学校事務職員の横浜市職員としての職層の位置づけは、県教委とのこれまでの経過を尊重し、一人職の特殊性や学校事務の独自性、専門性等を加味したものとすること。

 

3.誇りとやりがいをもって取組む学校事務を創造するために

 

学校は、学校に働くすべての教職員の持ち味が生かされ、その集団的な力が発揮される条件が整えられる必要があります。とりわけ少数職種の職員は、その職固有のそれぞれの専門性が行かされることにより教職員集団の質を高めることにつながります。教員中心に偏重しがちな学校運営を見直し、各職種の専門性が生かされる体制づくりが必要です。とりわけ学校事務職員が学校職員として成長していくためには、職員会議はもとより校内の諸会議への出席、学校行事への参加など教育活動の見える位置付けなどに配慮される必要があります。また、自ら進んで子どもや保護者との接点を求めていけるよう周囲からの働きかけがされる職場環境が求められます。

通常の事務処理中心の作業事務に追われているだけでは、本来の学校財務、就学保障、環境整備などの企画立案、推進運営をになう力量も高められず、その役割を果たすことはできません。学校事務職員が誇りとやりがいをもって取り組める学校事務が求められています。

 

(1)極端に教員に偏重した教員の目線からだけの学校運営から、学校事務職員など少数職種の視点も大切にされる学校運営をすすめる条件整備をはかること。当面、学校事務職員を「企画会議」「運営委員会」等の構成員として位置づけること。

 

(2)学校財務、就学保障、学校環境整備などを中心に、学校固有の職員にふさわしい、学校事務職員独自の研修体系を確立すること。

 

(3)学校事務職員の職務内容についての「教育長通知」「総務部長通知」を担うには、人員増が必要です。基準財政需要額に基づく市費事務職員を配置することで、学校の多忙化解消をはかること。

 

(4)小中一貫ブロック活動の中に、学校事務職員の活動も加え、就学保障、教育環境整備、実践交流などを中心に学校間連携を進めるようはかること。

 

(5)学校事務の共同実施の成果と展望を明らかにし、就学援助加配や複数配置のボーダーラインにある学校など困難な学校現場に加配するなど実効性のある対応をはかること。

  また、法制度上「学校に置くもの」とされている学校事務職員を行政機関である「学校教育センター(仮称)」に兼務させることは問題であり、兼務発令を取りやめること。

 

(6)学校教育センター(仮称)については、単に学校の近くにあるということだけでなく、真に学校を支援する機能が充実していて、教育の機会均等が保障される豊かな教育条件整備をになえる質を持った体制であることが欠かせない。したがって、共同実施加配の「活用」など学校現場の人材を学校から剥がすようなことをせず、必要な人員増をはかるなど、これまでの取組みを見直し、再計画化をはかること。

 

4.生き生きと働ける教育現場にふさわしい環境の整備・充実のために

 

学校が自主的自律的に学校経営を進めていくためには、学校に働くすべての学校職員の専門性が生

かされ、その集団的な力が発揮される条件が整えられる必要があります。教育現場におけるトップダウン体制は、教職員集団による教育力を弱め、画一的で硬直した横並びの学校を生み出すことになりかねません。子どもたちに寄り添い、学校生活がまるごと人間らしい育ちを後押しする子どもが主人公の学校づくりが求められています。

 

(1)労働安全衛生法の法令上定められている施策については、雇用責任の下、学校現場においても必ず実施し、教職員の健康と権利を守ること。

 

(2)人事評価システムを賃金(昇給、勤勉手当)に反映させることは、教育人材づくりと矛盾するものであり、廃止すること。合わせて、やむをえず実施するのであれば、誰もがまじめに努力していることを前提に「まじめにこつこつ働く教職員」への評価、そして賃金への反映を公平に行なうこと。

 

(3)福利厚生の充実、病気(特にメンタル面)の予防措置対応、および休職後、安心して復帰できるトレーニングシステムの導入など健康で安心して働き続けることのできる対応をはかること。

 

(4)労働時間など勤務条件についての実態調査を行い、学校現場が「教育を行なうにふさわしい場所」になっているか分析、検討の上、学校管理のあり方等についての見直しを行なうこと。


Homeへ

横浜教問懇TOPへ

inserted by FC2 system